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澄んだ、綺麗な、空の色。泳ぐ無数の鯉のぼり。

雲一つない皐月晴れ。若葉がきらきら煌めきます。

いつつめの月。水色の晴天に、緑色のアクセント。
そしてホトトギスが鳴きました。


小鳥が鳴きます。花が咲きます。若葉が生い茂ります。
心地よい風が吹き抜ける暖かい日。でももう少ししたら暑くなるんだよ、そう告げるようにホトトギスの声がしました。
そんな清々しい青空の下、僕は少し困っていました。

「どうしよう…これ。」

僕の手には真新しいサッカーボール。そして誕生日おめでとうと書かれたカードがありました。
小学生か。僕はサッカーになんて全く興味ないのに母はどうしてまたこんな物を。どうせなら本でも買ってほしかったなとか、そんなことを思いました。
ため息をつきながらサッカーボール片手に通りを歩いていました。

そしてしばらく歩いていると川にたどり着きました。橋にかかっているローブにたくさんのこいのぼりが。
こどもの日のお祝いに街の人がかけたのでしょう。赤、青、緑…色とりどりの綺麗なこいのぼりが泳いでいました。
その時、急に子供の声がしました。

「ホトトギス君っておまえ?」

驚いて振り返りました。そこには白い髪に緑色のメッシュが入っていて、膝丈くらいの着物を着た少年がいました。
ああ、月の子か。もうそうすんなり理解できるようになっていました。
少年はぴょんと橋の上に飛び乗ると僕に言います。

「おまえ、おいらが見えてるよな?じゃあやっぱお前がホトトギス君?」

「ホトトギスじゃなくて、子規っていうんだけどな…。ところで君、名前は?」

「おいらはサツキだよ。ってかホトトギス、そのサッカーボール何?」

いつから僕の名前はホトトギスになったんでしょう。僕はまたため息をつきました。
多分桜花が僕のことをサツキに話したのでしょう。絶対そうだと僕は思いました。
そう思ってる間、サツキはサッカーボールをじっと見つめていました。

「サッカー好き?あげようか?」

「ほんとか!?」

僕はサッカーボールをサツキに渡しました。サツキは橋の手すりから降りてボールを受け取ると、ドリブル、ヘディング、リフティングと器用にボールを操っていきます。
なかなか上手いものです。これならいっそ本当にサツキにあげてしまおうかなと思いました。
雲一つない青空の下、楽しそうにサッカーボールで遊ぶサツキの笑顔が眩しいです。僕にはそんな笑顔はできないから。

「なんだ、おまえ暗い顔してんな。もっと楽しくいこうぜ。」

そう言ってサツキはサッカーボールを蹴飛ばしてはしゃぎ回っていました。
無邪気で、明るくて。最後にそんな子供みたいに笑ったのはいつだったか。そう思った時でした。

「そういやおまえが持ってるもの何?」

サツキは僕が持っているカードを指差しました。
誕生日おめでとうと書かれたカードを見せた途端、サツキはギョッとした顔をしました。

「もしかして、これおまえの誕生日プレゼントなのか!?」

「うん、母親がくれた。けど僕サッカー興味ないからあげ…」

「駄目だ駄目だ、誕生日プレゼントなら駄目だ。返す。」

そしてサツキはサッカーボールを押し付けました。
そして急に説教でもするように言いました。

「おまえな、人からプレゼントされたものをあげちゃ駄目なんだぞ!
 くれた人にしつれーなんだぞ!おかーさんが泣くぞ!」

「はあ…。」

さっきまで楽しそうだったのに急に怒られてしまいました。
僕は無表情のままサツキのお説教を聞いていました。しばらくしてようやくお説教が終わると、サツキは急に僕に言いました。

「おまえ変な奴だな。怒らないのか?」

「はあ?」

「お説教したら、しょんぼりか逆ぎれがお約束じゃないのか?
 おまえ、ずっとそんな顔だ。笑いも、怒りも、しょんぼりもしない。」

そんな顔。それがどんな顔かわかりませんでした。けれどとりあえず明るい表情ではないのはわかります。
だってどうしても明るい気分にはなれないから。ずってそう。穴が空いたような喪失感。
すると何も答えない僕の顔を覗き込んでサツキは言いました。

「じゃあ、おいらがおまえの誕生日お祝いするから、そしたらおまえ喜べよ!ぜったいだぞ!」

するとサツキは「じゃじゃーん!」とわざとらしい効果音をつけてハサミを取り出しました。
そして橋の手すりへと登ります。その時、急に強い風が吹き始めました。
こいのぼりが風になびきます。

「おまえ、空を泳ぐこいのぼりを見たことあるか?」

そう言うとサツキはこいのぼりをロープに繋いでいるひもを片っ端からハサミで切っていってしまいました。
次々とこいのぼり達が空に放たれます。赤、青、緑…こいのぼり達が風に乗って本当に空を泳いでいきます。
サツキがひもを切る度に一匹ずつ増えていき、陽の光を受けて輝きます。
とても綺麗でした。純粋にそう思いました。まるで青い川を本物の鯉が泳いでいるようでした。
こうして、何かに綺麗だと見とれるのも随分久しぶりです。

「誕生日おめでとーだ!な、どうだ、すげーだろ。喜べ!」

後ろを振り向きくと、サツキの眩しい笑顔が。
そして、どれくらいぶりでしょう。僕も心から楽しい、と思いました。

「うん、すごいや。ありがとう!
 なんか、元気出たよ。」

凍りついたような顔が緩み、少しだけ笑えました。
それを見たサツキも満足げに笑いました。そして僕はもう一度サツキに背を向けて空を見上げます。
空を自由に泳ぎ回る鯉達も、どこか笑っているような気がしました。
はづきが死んだ、あの日以来なかったかもしれません。心の底から、楽しくて笑った日なんて。
その時。

「ほんとはな、桜花に言われたんだ。励ましてやれって。
 迷子のホトトギスをさ、飛ばせてやれって。」

驚いて振り返った時、そこにもうサツキは居ませんでした。



続きからキャラ紹介。




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名前:サツキ
性別:男
5月の子。白髪に緑色のメッシュ。外見は12、13歳くらい。
一人称は「おいら」で子供っぽいしゃべり方をする男の子。
やんちゃでわんぱくな性格でいたずら好き。サッカーや野球などのスポーツが好きでとても活発。
柏餅が好物。4月の桜花とよく花見団子とどっちがおいしいかで対決する。
いつも笑顔が絶えない、とても明るい子。
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